最近読んだ本ですが、非常に面白い本です。
暗号の作成と解読の歴史を紹介しています。途中で寄り道して古代文字の解読(線文字Bなど)も扱っています。
著者のシンは非常に聡明な人で、難解な暗号の作成や解読の手法を、非常にわかりやすく解説してくれます。話の根幹を簡潔にまとめる能力が驚くほど高く、なるほどそういうことなのかと納得しながら楽しく読めます。
昔からドイツのエニグマ暗号機に興味があったのですが、この本でその仕組みや、不可能にも思えるその解読がどうなされたのが分かり感激。またウェブ上での情報交換を安全にするために不可欠な素数を利用した公開鍵のアイデアには驚きました。世の中、頭のいい人はいるものです。
暗号、ではないのですが棋譜というものも初心者にとっては意味不明な数字の羅列という意味では暗号的かもしれません。生徒には意味がわからなくても並べているうちにいろいろな発見があるよと教えているのですが、大抵は根気が続かないようです。棋譜並べが本当に意味のある練習になってくるのはアマチュア3,4段を過ぎてからかもしれません。もちろん早い段階から棋譜並べをするのが意味がないというわけではありませんが。
私は高1のときにはじめて囲碁年鑑を買って、1年くらいかけて並べきりました。当時の棋力は初段くらいで、囲碁年鑑の簡潔な解説だけでは意味がわかりません。それでも並べ続けるうちに同じ形が反復されているのに気がついたりすることから、いろいろなことを推測するようになりました。暗号解読の一つの基礎は反復から暗号化の仕組みを推測するというものですが、棋譜並べもパターンから着手の意図を読み取ることができるようになるものなのです。
ある形で、必ずノゾキを打ってからハネていることに気付いたとしたら、何かハネを先に打ってはいけない理由があるはずなのです。ありがたいことにプロ棋士の着手は非常に正確で、しかも自分が最大限得するような手を選んでいるはずですから、同じパターンが現れるということは、そこに動かし難い必然があるはのです。また特定のパターンを逸脱した手がでたとしたら、その局面にはいつもどおり打ってはいけない特殊事情があるということです。普通の場合での必然を覆した特殊事情とは何か?そんなことを考えてみることで、大局観なんかも身に付きます。
もちろん、パターンに気がつけても、なんでそう打つかが分からないことの方が多いです。しかし、そういう謎は囲碁を続けていくうちにだんだん解けてきます。いつか、そういうことだったんだとわかる瞬間が来ます。非常に道のりは長いですが、そうして身に付けた考え方や知識が本当の意味での棋力になると思います。技術本を読むのは効率が良いのですが、よほど繰り返し読まないと薄っぺらな知識で終わることが多いように思います。
囲碁が暗号解読と違うのは、棋風によって全然意図や解釈が違ってきたりすることです。
棋風が違うから全然予想外なところに打たれる。それはまだよい方で、想定した手順はほぼ同じなのに、それを選んだ理由や形勢判断が違うということもよくあることです。お互いに納得の進行に見えて誤解の連鎖にすぎないことも。
さらにアマチュアの碁なんてひどいもので、自分が何をしているかも気づいていないなんてこともしばしば。暗号的に楽しめるのはやはりプロの棋譜ということになるでしょうか。
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