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2010年02月17日

敗着の心理分析

 平岡聡さんが世界アマチュア囲碁選手権で初優勝したとき、『棋道』で大きく取り上げられ、中国戦の棋譜も詳細な解説付きで掲載された。(『囲碁クラブ』でもアメリカ戦の棋譜解説中心に大きく取り上げられていたような気がする)内容は完勝で、平岡強しの強烈な印象が今でも残っている。その記事の中に「敗着の心理分析をするのが好きです」というひとことがあり、それがひじょうに心にひっかかてきた。

 私自身は基本的に囲碁は盤面を見て打つものだと考えるタイプで、相手が誰かということは考えないし自分の心理状況などというものも興味の外だ。答えはすべて盤上にあるのであって、より正確にその局面を理解できたら勝てると思っている。着手の意味や効果を考えることはあっても、その着手の裏にある「心理」などというものにはあまり興味がなかった。今でも基本的にはそうだ。「敗着の心理分析」などをするという意味がぴんとこなかった。

 ただここ数年いろいろ考えるところがあって、この「敗着の心理分析」は非常に面白いし、有意義なことだと思うようになった。

 人間だから悪い手を打ってしまうし、悪い手を打てば負けてしまう。そこで問題なのは、悪い手を打とうとして悪い手を打ってしまったのではなく、良い手だと思い込んでいたり、勝つための一手として悪い手を打ってしまうことだ。悪い手を論破することや、良い手といわないまでもそれよりましな手を示すことはそう難しくない。しかしそれはなぜそんなつまらない手を打ってしまったかという答えにはならない。自分の敗着であろうと、誰かの敗着であろうと、それはその瞬間にはいい手だと(少なくとも悪い手ではないと)思って盤上に置かれたのだ。なんでそんな錯誤が起きたかを深く追求することは重要だし、そのときに「心理」を考えることは非常に重要だ。どういった状況になると自分はどんな行動に出るのか。自分が形勢判断のミスをするのはどんなケースが多いのか。そういうことを知るのはとても有意義だ。

 これは第16期棋聖戦7番勝負第7局の1場面である。挑戦者山城宏九段が黒番、小林光一棋聖が白番。

10021701.jpg

 黒1を絶対の先手と見ていた山城九段は白2を見てびっくり。白6が変な形だが、最強の頑張りで白は死なない。(この手の奇妙な姿と、その意外な効果には見ている方も驚いた)これは単純な見落としだろう。
 問題はこの後で、実はこの白は死なないが、黒が巧妙に攻めれば大きく寄せることが可能なのである。(実はその手順がわからなくて今困っている・・・)その手段を効果的なタイミングで行使していれば黒は大分勝ちやすかった。山城九段は最後までそれを見逃し細碁になり、細碁は小ヨセで2目損して半目負けという、悪夢のような負け方をした。(小林光一棋聖は7連覇を達成)

 山城九段はなぜその手段に気がつかなかったのだろうか?山城九段はトップ棋士であり、当時絶好調だった。時間もたっぷりある2日制の碁。どう考えても山城九段なら気がつきそうなものだ。それを見逃したのは、どう考えても白6を見損じた後悔や動揺のために、読みに粘りを欠いたとしか考えられない。

 自分でもそういうことがあるし、毎日碁席で他人の碁を見ているとよくわかるが、人間にはミスに気がつくとかっとなって早打ちになったり、ミスをした部分から目をそむけて何も考えなかったりする習性がある。ミスをしたら、どういうミスなのか、どれくらい損してどういう状況になったのかということを客観的に把握することが重要だ。そのうえで新しい計画を練り直さねばらなない。それは当たり前のことだが、実に難しい。人間には心があるからだ。最近は、本当の意味でミスを減らしたいならば、自分の心理状況も含めて反省してみる必要があると考えている。そうしないと、知識をいくら増やしても同じ過ちを繰り返す恐れがあるのである。

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posted by das53jp at 19:48| Comment(2) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご存知とは思いますが、高木九段監修の「囲碁百名局下巻」に、ヨセで黒が6の右上につけて白2子を取る後手15目の手が示されていますね。

幸運を引き寄せるあるいは手放してしまう何らかの要因があるかもしれないにしても、こういうタイトル戦の大一番の勝ち負けやプロ入段試験でのドラマには、運というものがあると思わずにはおれません。
Posted by asutoron at 2010年02月18日 01:09
 ありがとうございます。

 自分で読めないといけないんですが・・・
 この手段を解説で読んだときに、(当時初段だった私は)こんな手を普通にわかっていなければならないプロは大変だなぁと思いましたね。
Posted by だす at 2010年02月20日 20:51
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